クレジットカード払いについての記事を書くと、わりと頻度よく『クレジットカード払いをするとお店が損するから、使わないようにしている』とか、『お店側に申し訳ないから、なんとなく使いにくいんだよね…』といった意見を頂くことがあります。
実際、つい先日も下記ツイートが話題になっていたくらい。
タクシーの運転手さんに「現金とカード、支払はどちらが楽なんですか」と訊ねたら、「カード決済の手数料8%は運転手個人の負担になる」との返答。手間が楽なのはどっち? というつもりで訊いたので、少し驚いた。会社の負担ではないのだそう。
これからタクシーは必ず現金で払うことにします。
— 伊藤 剛 (@GoITO) 2016年9月2日
この方も「タクシー運転手に負担が行くくらいなら、クレジットカード払いをやめる」と思われたようなんですが、これ、ほんとうに正しいんでしょうか?
そこで今回は「クレジットカード払いをするとお店に迷惑がかかるから使わないほうがいいのか?」について、私の持論を書いてみたいと思います。
あくまでひとつの意見ではありますが、クレジットカードの加盟店手数料をお店に負担させることに抵抗を感じている方に読んでもらえると嬉しいです。
※クレジットカードの加盟店手数料をご存知ない方は、こちらの解説記事から先にどうぞ。
手数料負担を避ける行為について:
まず、クレジットカード払いをするとお店が損をする…という考え方は、お店に手数料を負担させてしまうデメリット部分しか見ていません。
なぜならお店が手数料を払ってまでカード決済を導入する背景には、お店にとってなんらかのメリットがあるのは間違いないため(デメリットしかないとしたら誰もカード払いなんて導入しない)。
- 間違い:カード決済導入はお店にとって負担になるだけ
- 正解:お店にメリットもあるからカード決済を導入する
ではクレジットカード決済を導入するとお店にはどんなメリットがあるのか?わかりやすく前述のタクシーを例にして解説していきます。
1.客単価があがる:
クレジットカード決済導入のメリットひとつ目は、カード払いOKにすると客単価(1人のお客さんあたりの売上高)があがる傾向にある点。
タクシーであれば「ちょっと遠くまで行って欲しいんだけど、手元の現金が足りないからクレジットカードでもいい?」といったような、長距離需要を拾えるってことです。
- カード払いOK:客単価があがる
- カード払いダメ:客単価が低いまま
事実、乗車時に遠距離利用をしたい旨とクレジットカードが使えるかどうかを聞けば、運転手が「クレジットカード払いだと手数料がかかるから困る。現金を用意してから乗ってくれ。」なんて言ってくることはありません。
確かに手数料の負担はありますが、その分、儲かる額も増えるためクレジットカード大歓迎となります。
2.客数が増える:
ふたつ目はクレジットカード払いを導入するとやってくるお客さんの数が増える点。
タクシーでの事例なら「運転手さん、すいません。今、現金の持ちあわせがないんですけど、クレジットカード払いって使えますか?」と聞いてくるお客さんを断るかどうか…という話です。
- カード払いOK:客数が増える
- カード払いダメ:客数が増えない
そこで仮に「カード払いは手数料が高いから現金じゃないと困る!」と見込み客を追い返してしまうのか、それとも「それじゃ仕方ないな。クレジットカード払いでいいよ」と受け入れるのか。
経営を考えるならもちろん後者ですよね。
このようにクレジットカード払いをOKにすると、それだけでお客さんの数が増えるもの。
実際、当サイトにも、『マクドナルド クレジットカード』とか、『すき家 クレジットカード』といったキーワードでの閲覧が多いことを考えると、一定数の客数アップ効果があるのでしょう。
外国人観光客も増える:
加えて最近の事例だと、クレジットカードOKにしただけで外国人観光客が増える統計結果も存在。
- 現金のみ:外国人観光客が寄り付かない
- カード払いOK:外国人観光客が来店しやすい
海外からやってきたお客さんは日本のお金に不慣れ&所持額が少ないので、クレジットカード払いが使えるお店を優先的に利用する傾向があるのですね。
しかも彼らは海外旅行できるほどに裕福な人たち。
お店に落としてくれる売上も日本人客以上です(お店の外にVisaやMastercardのステッカーを貼るだけで来店数アップにつながる統計データはこちら)。
3.現金管理の手間が減る:
クレジットカード導入のメリット、最後は釣り銭の用意や売上集計といった現金管理の手間が減る点。
タクシーだと「運転手さん、初乗り区間を利用したいんですけど、今、1万円札しかないんです。クレジットカード払いと現金払いどっちがいいですか?」と聞けば、半分くらいの運転手がクレジットカード払いを選択すると思います(タクシーは釣り銭がなくなると一旦、事務所に戻る手間が生じる)。
- カード払いOK:
手数料はかかるが手間いらず(事務所に戻って釣り銭を確保しなくて済む) - カード払いダメ:
銀行へ往復する人件費や両替手数料がかかる。売上にもズレが出やすい。
これは一般の店舗でもまったく同じ。
釣り銭を用意するために銀行で両替したり、売上金額を銀行に預けに行くなどの手間がかかるわけですが、クレジットカード払いであればその手間が省けます。
釣り銭がなくて無料になったタクシー代:
蛇足です。
先日、現金払いのみのタクシーに乗車したんですが、支払いの際に1万円札を出すと「すいません、今、釣り銭の用意がないんで今回の乗車賃は無料でいいです」とタダにしてくれたことがありました。
仮にクレジットカード払いOKならそんな機会損失を起こさずに済んだわけですから、タクシー運転手はもったいないことをしたなぁ…と思います。
タクシー強盗はどんなタクシーを狙うのか?:
質問です。
もしあなたがタクシー強盗だとしたら、クレジットカード払いOKのタクシーと現金払いのみのタクシー、どちらを狙うのが効率的だと思いますか?
この答えはまぁ、カンタンですね。
現金払いのみのタクシーのほうが現金売上が多く、釣り銭も豊富に用意されている可能性が高いため狙い目となります。
- 現金払いのみのタクシー:現金売上が多い&釣り銭も多い
- クレカOKのタクシー:現金売上が少ない&釣り銭が少ない
反面、クレジットカードやSuicaに対応したタクシーは現金売上が少なく、釣り銭もほとんど用意されていないかも。
強盗をするにもリスクの割にリターンが少ないと言えそうです。
カード手数料だけ気にしてもしょうがない:
こんな感じでクレジットカード決済にはデメリットもあればメリットもあるわけですが、それをすべてひっくるめた上での持論を書きます。
結局、ほんとうにお店側が「クレジットカード払いを使われるなんて迷惑だ!」と思ってるなら、カード払いの受付を拒否すればいいだけ。
それをせずにクレジットカードが使えます…という看板を掲げて集客をしている以上、私たち消費者にはそれを利用する権利があります。
わざわざお店の経営のことを心配する必要性はありません。
図書カードやQUOカードだって一緒:
それにクレジットカードの手数料のことだけを心配しても仕方ないんですよ。
図書カードやギフトカードをはじめ、タクシーチケットであっても経営者側は手数料を払っているわけですから条件は全部一緒。
- 図書カード:手数料が必要
- ギフトカード:手数料が必要
- タクシーチケット:手数料が必要
なぜクレジットカードの手数料だけをそんなに気にするのかわかりません。
電子マネーも手数料が必要:
また、クレジットカードの影に隠れてあまり目立ってはいませんが、SuicaやQUICPayといった電子マネーについても店舗側は手数料を負担する必要性あり。
- Suica:手数料が必要
- 楽天Edy:手数料が必要
- QUICPay:手数料が必要
- WAON:手数料が必要
手数料の負担率としてはクレジットカードとほぼほぼ同じなんですけど、クレジットカードばかりが悪役になるのも不思議な話だなと思います。
お店は無数の費用を払っている:
その他にも家賃、人件費、送料、セール割引、タイムセール、ハッピーアワー、クーポン券利用などなど、お店が負担をしている費用は無数に存在。
こういった費用を気にしてあげるなら、是非、「この洋服は30%オフになってるからお店に悪いわ。定価のこちらをちょうだい!」とか、「ハッピーアワー中はビールが半額みたいだけど、俺は悪いから定価でいいよ。」って言ってあげてください。
- セール品が安くなっている:定価で買うべき?
- ハッピーアワーで安くなってる:定価を払うべき?
- クーポン券で会計を安くする:定価で払うべき?
- 5,000円以上で送料無料:送料を払うべき?
なにせ割引や送料だって店側にとっては立派な負担。
クレジットカードや電子マネーの加盟店手数料だけに着眼して「お店に悪い」と思うのは物事の一部分しか見ていないのです。
カード払いだけがお店に手数料を負担させてる?:
あと、こういう議論をするとよく言われるのは「現金払いだと手数料がかからない以上、クレジットカード払いが嫌われるのは当たり前」という意見。
確かに現金払いのお客さんだと手数料がかからないのに、カードを使うお客さんの場合にはお店側の利益が減る感覚はあるかもしれません。
しかしそれは前述のようにカード決済の負の側面しか見ていないのかも。
もしかしたらそのお客さんはクレジットカードが使えるからこそやってきたお客さんかもしれませんし、カード払いが使えるからこそ財布の中身より多くのお金を使ってくれた可能性もあるわけですから、一概に手数料を払う価値がなかったとは言えないのです*1。
カードが使えるから再訪するお客さんも:
畳み掛けるようにもうひとつ。
昨今では現金払いしかできないお店にあまり寄り付かない「キャッシュレス派」の人間は意外と多いので、電子決済導入にはキャッシュレス派を呼び寄せる効果あり。
- カード払いOKのお店:キャッシュレス派を惹き付けやすい
- カード払いNGのお店:キャッシュレス派が近寄らない
事実、下記記事で取らせていただいたアンケート結果のようにクレジットカードが使えるかどうかは店選びの指針となるので、現金払いしか使えないお店はそういったお客さんを排除してしまってることとなりますよ。
経営者の方はご注意ください。
カードを使うと嫌な顔をする経営者:
ちなみに私は過去、カード会社と加盟店手数料交渉した経験があるんですが、交渉をすればするほど、あれってほんと「知らない人に著しく不利なもの」だなーと思わされることばかりでした。
そもそも加盟店手数料の料率交渉すら出来ないと思ってる店舗経営者は多いですし、どことどう交渉していいのかなんてことも知らないことが多い。
だから加盟店手数料が高止まりしたままで負担が大きいのです(手数料の下げ方は下記記事にて)。
結果、そういったどんぶり勘定な経営者が手数料負担を嫌がって、カード払いをしようとするお客さんに対して不機嫌そうな表情をしたり、「クレジットカード払いは困るんだよー」なんて小言を言ってしまう形に…。
まぁそんな小言を声に出してしまうお店は潰れるだけなんでしょうけど、お客さんを睨みつける前に、ちゃんと経営をしてほしいものです。
お店の経営は、経営者の仕事:
まとめます。
クレジットカード払いを使うと確かに加盟店手数料と呼ばれる費用がかかりますが、そのデメリットと同等かそれ以上のメリットがカード払いにはあります。
だからこそお店はクレジットカード決済を導入しているわけですから、私たち消費者側は気にすることなく使ってOK。
わざわざクレジットカードの手数料だけを心配する必要性はないので、手数料うんぬんなどの計算はそのお店の経営者に任せましょう。
それが経営者の仕事ですよ。
以上、クレジットカードを使うとお店に迷惑がかかるから使わないようにしてるって意見は正しい?クレカ決済導入は店側にもメリット有りです…という記事でした。
参考リンク:
クレジットカード払いを使うとお店は資金繰りも悪化するんだよって方は、下記記事も参考に。
最近だと翌日にはカード利用代金を振り込んでくれる時代になってきているので、そういう資金繰りの問題はなくなりつつありますよ。現金払いと資金繰りに差はほとんどありません。
*1:ついでにいうとその理論だとクーポン券を使うお客さんとクーポン券を使わないお客さんじゃ、クーポン券を使うお客さんが嫌われて当然だ…となってしまうだけので、クレジットカード利用者のみが嫌われる理由にはなりません(ほかにもアプリ限定割引とか、JAF割引なども同じように差が生じている)。