クレジットカードの読みもの

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世界的に見て、日本のクレジットカード不正対策はかなり遅れている!アメリカもかつて、日本と同じカードセキュリティ後進国でした。

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昨日、クレジットカード決済について対面式に切り替えていくべきだ…という記事を書いた私。

お陰様で多くの方に賛同を頂くことが出来たのですが、いくつか「アメリカでもテーブル会計の時に奥に持っていくから日本もそれで大丈夫」みたいなセキュリティ意識が低いコメントを頂いたので、今回はこの辺についての記事を書いておこうと思います。

カード業界での先進国はヨーロッパ:

まず、クレジットカード業界におけるグローバルスタンダードは基本的にアメリカではなくヨーロッパです。

イギリス、フランス、スウェーデンなどなど、ヨーロッパの北側&西側の国では、限りなく100%に近い程度にICカード決済が普及。アメリカン・エキスプレスやダイナースクラブなど一部のステータスカードはICチップ無しでも許容されやすいようですが、VISAやMasterCardでICチップなしのものを使おうとすると支払いを拒否されるケースもあります(断られはしなくても、対応に手間取ることは多い)。

そのくらいICチップ搭載のクレジットカードは普及していますし、お店側もICチップ決済に対応をしたクレジットカード決済機を用意しているのが常識。

これは1990年代にクレジットカードの不正利用が急増してしまったため、ヨーロッパが中心となってICカード決済の仕様(EMV)を策定し、積極的に不正防止に取り組んだ結果であると言われています(引用はこちらから)。

今から20年前の1995年にヨーロッパのユーロペイ(Europay)、マスターカード(MasterCard)、Visaの三つのそれぞれの頭文字をとって“EMV”と名付けられたペイメントカードのICカードの世界統一仕様が決定された。

磁気カードのセキュリティの脆弱性によりカード偽造などの不正が増加したため、より強固なセキュリティを確保するために、クレジットカードのみならず、デビットカードやATMカードなどの磁気カードのEMV ICカード化とPOSカード決済端末機とATMという2つのデバイスのEMV ICカード対応の取り組みが2000年中頃から、イギリスなどヨーロッパから始まった。

アメリカはEMV後進国:

反面、アメリカはというとクレジットカードのEMV準拠(ICチップ搭載をすること)を近年まで徹底拒否。Mobile Payments Newsというところの2014年時点での調査によると普及率は全体のわずか0.3%と、逆に100%近いクレジットカードがICチップ無し…という状況でした。

また、国際ブランドVISA側が作成したこちらの資料にもアメリカにおけるEMV化が遅れていることが顕著に出ています。2014年当時のアメリカはICカード決済対応の端末がわずか9%しかないという惨状だったのです*1

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大統領令でICカード化が劇的に進む:

それが2014年にオバマ大統領がカードセキュリティに関する大統領令を発令し、EMV準拠のクレジットカード発行が義務化。2015年中にはICカード決済比率が50%を越え、現在では限りなく100%近い数字になってきていると言われています。

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上のグラフは、アメリカ国内のSquare加盟店で決済されたクレジットカードのうち、ICチップ搭載のクレジットカードの割合を示すもの。2015年1月には僅か12%だったICチップカードの利用率は、1年未満で50%近くまで急増しました。

このペースでいけば、アメリカは2016年には100%近くのカードホルダーがICチップカードを使うまでに至っているかもしれません。クレジットカードの安全性向上に対するアメリカの本気の姿勢がうかがえます。

これを見ると、いかに本気でアメリカがクレジットカード不正防止対策に乗り出しているかがわかりますよね。加えてアメリカのクレジットカードは有効期限が3年に設定されているものが普通なので、順調にICカード化が進んでいるなら現時点ですでに100%を達成しているものと思われます。

加盟店側が責任を問われることに:

また、クレジットカード決済端末についてもライアビリティシフト(セキュリティ対策の甘いお店で起きた不正被害は、お店、またやカード決済業者の責任になること)が導入された結果、急速にEMV準拠の決済端末に切り替わりつつあります。

世界最大のクレジットカード決済ネットワーク会社Visa(ビザ)は10月1日、日本および米国で「CHIPライアビリティシフト」(債務責任の移行)というルールの導入に踏み切る。

これは、ICカード化対応をしていなかった小売店のPOS端末などで偽造カードが使われた場合の被害の補償について、従来、カード発行会社(イシュアー)が負っていた責任を、加盟店側(加盟店または加盟店管理会社(アクワイアラー))に移転させるというものだ。すでにライアビリティシフトは欧州やカナダ、アジア太平洋諸国などで導入されているが、今回、最大市場の米国や日本でもルールを導入する。

VISA側の推計によると2018年にはアメリカ国内の決済機の92%がEMV化するというものもあるくらい。いかにアメリカが本気でクレジットカードのセキュリティ強化に取り組んでいるかがわかります。

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ただ今はまだまだその過渡期なので、お店によっては未だにEMV準拠ではない旧型の決済機を利用しているところもあると思いますし、テーブル会計の際に店の奥に持っていってしまうようなところも多い模様。

しかし前述のように今後はヨーロッパ同様、お客さんから見えるところでクレジットカード決済をするのが主流に切り替わっていくと思われますね。お店としても不正利用されると困るからこそ、顧客の目の前で行うカード決済が増えていくのです。

日本はアメリカよりも酷い状況:

ここで気になる日本はどうなのか?

意外かもしれませんが日本はヨーロッパ同様、2001年頃より三井住友カードやJCBカードといったクレジットカード会社によって、ICチップ搭載のクレジットカード発行には積極的でした。

しかし、残念だったのはすべてのクレジットカード会社の足並みが揃わなかったこと。アメリカン・エキスプレスやダイナースクラブ、当時のシティカードやSBIカードなどなど、ICチップ搭載をしなかったカード会社も多かったので、10年以上が経過した今でも70%程度しかICチップが搭載されていない状況です。

  • 大手カード会社:ICカード発行に積極的
  • 一部のカード会社:ICカード発行は費用がかかるので消極的

決済機についてはもっと酷い状況:

同様にクレジットカード決済機についても2014年現在で17%しかICチップ決済に対応していない惨状…。これではクレジットカードを不正使用してくださいと言わんばかりです(引用はこちら)。

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Visaの調べによれば、Visaブランドのカードでは7割近くにICチップが搭載されているが、POS端末(専用端末を含む)のIC化はわずか17%。しかも「ここ数年、端末のIC化率はほとんど上昇していない」(井原亮二・ビザ・ワールドワイド・ジャパン・リスクマネージメント担当シニアディレクター)。

というのも、百貨店やスーパーマーケットなどの端末のほとんどでIC化対応ができていないためだ。結果として、ICチップを搭載したカードであっても磁気読み取りの形で処理されているため、依然として偽造カード被害のリスクを免れない。

法律で義務化してこなかった日本:

ではなぜここまで日本にICカード決済が普及してこなかったのかというと、それはクレジットカードを発行する側にも、クレジットカード決済をする側にもICチップ対応を義務化しなかったため。

  • 2001年:ICカード発行開始
  • 2017年:ICカード発行比率は未だ70%程度

要は支援もなにもせずに「企業努力で対応してください」という推進目標でしかなかったので、体力ないカード会社や、POS端末改修にお金がかかるデパートやスーパーマーケットなどが10年たっても対応してこなかったのです。

まぁ、当然といえば当然ですよね、これ。

やっと重い腰をあげた政府:

さすがにこれではまずいと日本政府も方針を転換し、割賦販売法という法律を改正。この法律により半ば強制的に、IC対応のクレジットカード決済機に切り替える必要性が出てきています(こちらより引用)。

POS(販売時点情報管理)システムを運用する流通・サービス業にシステム投資を迫る法律が2016年12月、可決・成立した。クレジットカード業界と加盟店に対する規制を強化する「改正割賦販売法」である。

同法は流通・サービス業にカード決済端末のIC対応化などを義務付ける(写真1)。2018年6月の施行までに、端末の追加・入れ替えやシステムの更新などを済ませる必要がある。

改正割賦販売法自体は2018年6月の施行ですが、政府方針を見る限りだと2020年までに対応すれば「お目こぼし」いただけそうな感じ。

ただ東京オリンピック開催時までに対応しておかないと流石にまずいと思うので、まだICチップ対応できていないクレジットカード加盟店(カード払いが使えるお店のこと)は早めに対応しておいてもらえればと思います。

改正法の柱は、不正使用がしにくいIC型カードへの対応だ。日本ではIC型カードの普及率は6割で、対応端末の普及率も2割弱にとどまっている。法律で決済端末のIC対応化などを義務づけることで、経済産業省は20年までに全てのクレジットカードをIC型にしたい考えだ。

以上、世界的に見て、日本のクレジットカード不正対策はかなり遅れている!アメリカもかつて、日本と同じカードセキュリティ後進国でした…という話題でした。

どこかの国と比較して「○○もこうだから日本は大丈夫」と安堵するのではなく、世界的に見ても日本のセキュリティ対策は進んでいる…と言われるようになりたいものですね。是非、みなさんのご意見もお聞かせください!

参考リンク:

『ICカード決済に対応しなくちゃいけないのはわかったけど、10万も20万もするような決済機は買えないよ』という中小規模の小売店やレストラン経営者の方は、初期費用実質0円のモバイル決済導入がおすすめ。

こういった決済機でもEMVに準拠しているので、安心してクレジットカード決済に対応できますよ(詳しくは下記記事などにて)。

news.cardmics.com

*1:取引比率が9%ということは、取引数が少ない個人商店やレストランなどを含めた決済端末全体の比率でいうと更に低かったと思います。

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